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2022.01.25
人生を生きるための完全な手引書「バガヴァッド・ギーター」

昨年、書籍「バガヴァッド・ギーター マハリシ・マヘーシュ・ヨーギーによる新訳と注釈 第一章~第六章」を出版いたしました。「バガヴァッド・ギーター」はインドで古くから大切にされてきたヨーガの聖典です。これまでにも数多くの優れた注釈書が書かれてきました。
バガヴァッド・ギーターの物語は、古代の大戦争、その戦場のただなかで展開します。そこでは、人生において誰もが遭遇する根本的な問題、苦悩が、物語の主人公、当代随一の弓の名手である戦士アルジュナによって提示されます。彼は自分の師である主クリシュナに教えを請い、主クリシュナはアルジュナの求めに応じ、その解決策を彼に与えます。
戦場という差し迫った状況の中で与えられる主クリシュナの教えは、人生において活用すべき貴重な教えであり、現代に生きる私たちにとってもたいへん実際的なものです。
このブログでは、数回に分けて本書から引用しながら各章の内容を少しづつご紹介したいと思います。
人生という船を支える錨
「バガヴァッド・ギーター マハリシ・マヘーシュ・ヨーギーによる新訳と注釈 第一章~第六章」序 より
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「バガヴァッド・ギーター」は、人類を無知と苦しみの暗闇から救い出すために、神によって人間の祭壇にともされた「生命の光」です。それは時を超えて生き続ける聖典であり、いかなる時代のどんな人にも不可欠なものであると言えます。いわば人生の百科事典であり、この注釈書はそのための索引となるものです。
人生の相対領域には常に混乱と無秩序があり、人間の心はいつも過ちや迷いに陥ります。「バガヴァッド・ギーター」は人生を生きるための完全な手引書です。常にそこにあり、どんな状況にある人をも助けようと待機しています。ちょうど時の荒波にもまれる、人生という船を支える錨のようなものです。
「バガヴァッド・ギーター」は個人の人生に成就をもたらします。社会がその教えを受け入れるならば、その社会に安寧と秩序がもたらされるでしょう。また、世界がそれに耳を傾けるならば、恒久的な世界平和が実現するでしょう。
「バガヴァッド・ギーター」は、人生の科学と生きる技術を提供します。いかに存在するべきか、いかに考えるべきか、いかに行動するべきかを教えてくれます。内なる「存在」に触れることによって人生のあらゆる面を栄光あるものにするというその技術は、ちょうど木の根に水をやることによって、その木全体を生き生きとさせるのに似ています。その実際的な人生の英知は、これまで人間社会で尊ばれてきたいかなる英知よりも優れたものといえます。
数ある聖典の中で「バガヴァッド・ギーター」ほど多くの注釈書が書かれたものはありません。ここにさらにまた一つの注釈書を付け加える理由は、その教え全体における最も肝心なところを、本当に明らかにしたものが見当たらないように思われるからです。
賢明な注釈者たちは、それぞれの時代の要請に応えようとして、自らが見出した教えの真理を明らかにしてきました。そうすることによって、これらの注釈者たちは人類の思想史にその位置を占め、時の長い回廊にたいまつをかかげてきたのです。彼らは、英知の大海の大いなる深みを探求しました。しかし、その輝かしい達成にもかかわらず、「バガヴァッド・ギーター」の核心が明らかにされることはありませんでした。不幸なことですが、この古代の英知の神髄は、今までずっと見失われてきたのです。
つづく